加納朋子『螺旋階段のアリス』//読書記録

本の紹介

タイトル:『螺旋階段のアリス』 (新装版 )

作者  :加納朋子 (かのう ともこ)

出版社 :文藝春秋

発売年 :2016年9月

本の長さ:文庫本・291ページ

 

個人的情報

おすすめ評価・星4 ★★★★

読了日・2024年10月6日

所持形態:紙 文庫本

 

あらすじ:

内容紹介
大企業のサラリーマンから、私立探偵に転身を果たした仁木順平。しかし憧れのハードボイルドな事件の依頼は皆無、事務所で暇をもてあましていた彼の前に、真っ白な猫を抱いた桜色のワンピースの美少女・安梨沙が迷いこんでくる。
・初めての依頼人は、先月夫が亡くなり、貸し金庫の鍵を探してほしいという主婦。金庫の鍵は家の中にあるというのだが、完璧な主婦の目から逃れられた隠し場所とは? ……「螺旋階段のアリス」
・自分が浮気をしていないという調査をしてほしいと依頼する若い美女。夫の出張中、二人は彼女の行動を見張るが。 ……「裏窓のアリス」
・行方不明の犬を探してほしいという老婦人。死んだ夫が三十年も前にプレゼントしてくれたというその犬は、老婦人の妄想の中の〈幻の犬〉なのか?……「中庭のアリス」
・ビルの地下にある、誰もいない鍵のかかった書庫で、延々と鳴りつづける電話の目的を知りたい――〈地下室の番人〉山端から依頼を受けた仁木は、久しぶりに元の会社を訪れる。 ……「地下室のアリス」
・仁木の古い知り合いである真栄田氏は、妻が自分を週に数回用事を頼んで外出させる理由を知りたいというのだが。……「最上階のアリス」
・産婦人科の院長から、赤ん坊の世話を頼まれてしまった二人。探偵の仕事ではないと憮然としながらしぶしぶ引き受けるが。……「子供部屋のアリス」
・休みに入ったまま現れない安梨沙。心配を募らせる仁木のもとに一人の男が現れる。……「アリスのいない部屋」
心あたたまる七つの優しい物語。

 

引用:

螺旋階段のアリス | 出版書誌データベース

 

該当作品

ブクログ

booklog.jp

読んだきっかけ:

どこで知ったかは今では不明だが、読み始めたのは日常の謎を読みたいと思ったからなのは確か。あとは新装版の文庫本表紙のイラストに惹かれたのも確か。実は読み始めるまで短編集だとは思っていなくて、読み始めて短編集だと気が付いた。

 

感想:

ほのぼの、とした事件が7つ入った短編集。

 

とある会社の制度を利用し脱サラリーマンをして私立探偵に転身した仁木順平。

そこに真っ白な猫を抱えながら可愛らしい美少女で探偵助手希望だという市村安梨沙が事務所に迷い込んでくる。

 

7つすべての章が単純そうな謎に見えながらも、そこには複雑で人物それぞれの深い想いが秘められていた。それを、仁木と安梨沙が柔らかく解していくのが面白い。

 

作中には「不思議の国のアリス」に関する言葉や話題が多く出てきて、

不思議の国のアリスに絡めた状況の説明が行われる。が原作を知らなくても十分に理解できる。

個人的には原作を読んだことがないので、いつかはしっかりと読んで

仁木と安梨沙の二人共通の話題について私も寄り添ってみたいと思った。

 

短編集の各章の題は

  螺旋階段のアリス

  裏窓のアリス

  中庭のアリス

  地下室のアリス

  最上階のアリス

  子供部屋のアリス

  アリスのいない部屋

となっている。各章でそれぞれ違った夫婦がでてきたり、家族に関する事柄がでてくる。

個人的には後ろ3つの章がお気に入りで

 

最上階のアリスでは、愛ゆえの献身それ故の行動が伴う夫婦の話。

夫婦ともに幸せだったのだろう。

 

子供部屋のアリスでは、愛ゆえに世間の目を気にして女性を想う優しさと、医師としての信条による行動する産婦人科の男性と女性の話。

赤ん坊には、母親からの愛情なりスキンシップを受け取る権利がある。

 

最終章の アリスのいない部屋 では

仁木夫妻の会話がとても印象に残った。

2000年に単行本が刊行された本なので、今とは物の価値感や、それこそ男女の価値観など違いがみられる。

順平の妻と違って変われない焦りと、妻の順平に対する不変を願う想い

それぞれお互いが持っていた想いを打ち明けられたのはよかったと思う。

 

アリスとは何だったのか目が覚めた亜梨沙はどう進むのか気になるところ。

それについては、続きに『虹の家のアリス』があるみたいなのでそこで亜梨沙の思いなど分かればいいなと思う。

続編も読もう。と思う。