五十嵐律人『六法推理』//読書記録

本の紹介

タイトル:『六法推理

作者  :五十嵐律人 (いがらしりつと)

出版社 :KADOKAWA

発売日 :単行本・2022年04月    文庫本・2024年03月

本の長さ:単行本・344ページ   文庫本・384ページ

 

個人的情報

おすすめ評価・星5 ★★★★★

読了日・2024年10月13日

所持形態:紙 文庫本

 

あらすじ:

現役弁護士作家が放つ、青春×多重解決ミステリ!
その悩み、一人で抱え込まずお気軽に無法律へ。

学園祭で賑わう霞山大学の片隅。法学部四年・古城行成が運営する「無料法律相談所」(通称「無法律」)に、経済学部三年の戸賀夏倫が訪れる。彼女が住むアパートでは、過去に女子大生が妊娠中に自殺。最近は、深夜に赤ん坊の泣き声が聞こえ、真っ赤な手形が窓につくなど、奇妙な現象が起きているという。戸賀は「悪意の正体」を探ってほしいと古城に依頼するが……。リベンジポルノ、放火事件、毒親問題、カンニング騒動など、法曹一家に育った「法律マシーン」古城と、「自称助手」戸賀の凸凹コンビが5つの難事件に挑む!

 

引用:

「六法推理」五十嵐律人 [文芸書] - KADOKAWA

 

該当作品

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ブクログ

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読んだきっかけ:

表紙もタイトルもドンピシャに好みのこの書籍に出会った
青春 リーガル ミステリ 興味を惹かれないわけがない
あらすじを読めばリベンジポルノ/毒親/カンニングなど現代とくに表面化してる問題が提示されていて興味を惹かれたから

 

感想:

霞山大学の片隅で法学部四年・古城行成が一人で運営している「無料法律相談所」(通称「無法律」)に経済学部三年の戸賀夏倫が訪れるところから物語は始まる。
父は裁判官 母は弁護士 兄は検察官 という法曹一家で育った感情よりも法律視点から物事を見る冷徹な法律マシーンと言われている古城と、閃きと他者の考えや感情を読み取ることに長けている戸賀コンビが、
いやがらせ/リベンジポルノ、放火事件、毒親問題、カンニング騒動といった各種問題に対峙していくという物語。

 


法律上の見地から古城が導き出すひとつの推論を、
法律という専門的なことを知らないからこその夏倫の感想や洞察力、閃きで隠された真相に近づき、その上で古城の法律知識が合わさりトラブルを解決していくストーリー。
どちらかが探偵/助手といった感じではなくお互いがお互いに足りないところを補いあって進むものがたりがたまらなく好き

 

この作品は
短編が5篇(六法推理・情報刺青・安楽椅子弁護・親子不知・卒業事変)と
幕間が4つ(法曹一家・誰彼味方・秋霜激烈・陽炎天秤)
が含まれている 短編連作。
ひとつひとつの物語は独立しているが、物語の奥や、意外なところでつながっているのがまた面白い。

 

リーガルミステリといえど証拠や証人をつかった法廷バトルというものではなく、基本的には無法律に持ち込まれる大学生が遭遇したトラブルに法律を学ぶ学生が、法律の知識を使って解決していくという"青春"リーガルミステリである。持ち込まれるトラブルは学生の相談としては重いものもあるが、文章が柔らかいので読みやすいと感じた。

 


特に持ち込まれた問題の中にはリベンジポルノなど今どきの問題もある。
スマホなどの所持、SNSが広く周知されている現代だからこその社会問題などが語られていて物語の背景だったりを想像しやすいため読みやすいのではないか。

 

 

理解はしたが納得はしないということは現実でも多々あるのではないだろうか。
その上で法律の限界、時代にそぐわないものといったものにどう対処するのか、どう折り合いをつけるのか
法律を使って巨悪を暴き、不正を許さず、大逆転劇というようなすっきりする結末ではなく双方の立場からをもってしての妥協点というか大人の対応というかそういったところへの着地になることもあるがそこもまた現実的だなと感じた。

 


家族が法律という大きな枠組みは一緒でもそれぞれが職種別の視点・責任感といったものが古城を通して感じることができる。
その上で古城がなにをしたいのか。今自分が無法律でやっていることはいったいなんのためなのか。無法律でしたことはこれから古城をどういった道に進めるのか。そういったことをすべてひっくるめて古城が成長して自身を理解していく過程が見れて面白かった。続編も刊行されているので近いうちに読んでみたいと思う。

 

 

短編ではあるが、

多重推理・伏線・ロジカルがふんだんに描かれているので個人的に大好き
リーガルミステリなのでもちろん法律関係の用語だったりが時折でてくるが
その都度説明が入り、わかりやすく読みやすいので肩肘張らずに読むことができる。

 

登場人物/ストーリー/雰囲気 どれをとっても大好きな作品。