小林泰三『アリス殺し』 夢と現実の世界が絡まるファンタジーミステリー//読書記録

今回は『アリス殺し』を読んでみました。

この作品は「不思議の国のアリス」の世界をモチーフにした世界が出てくるファンタジー×ミステリーです。

 

 

作品紹介

タイトル:アリス殺し
著者名 :小林泰三  こばやしやすみ
出版社 :東京創元社

発売日 :

     単行本2013年9月

     文庫本2019年4月
ページ数:
     単行本254ページ
     文庫本384ページ

 

(単行本)

 

(文庫本)

 

あらすじ

最近、不思議の国に迷い込んだアリスという少女の夢ばかり見る栗栖川亜理(くりすがわあり)。ハンプティ・ダンプティが墜落死する夢を見たある日、亜理の通う大学では玉子(たまご)という綽名(あだな)の研究員が屋上から転落して死亡していた──その後も夢と現実は互いを映し合うように、怪死事件が相次ぐ。そして事件を捜査する三月兎と帽子屋は、最重要容疑者にアリスを名指し……邪悪な夢想と驚愕のトリック! 解説=澤村伊智

 

引用サイト:アリス殺し - 小林泰三|東京創元社

 

 

夢の世界と現実の世界が複雑に絡み合うファンタジーミステリー

読んだ理由

ファンタジー要素のあるミステリーを読もうと思ってたから。
しかもなんかダークファンタジーらしい、いいよね。
様々なところで様々な人が紹介していて気になっていたから。

 

個人的なおすすめ度紹介

ストーリーの雰囲気・読みやすさ・過激表現(グロテスク描写など)・おすすめ度

 

こんな人におすすめ

・不思議の国のアリスの世界を知ってる人、ファンタジーに興味がある人

・独特な会話表現が大丈夫な人

・グロテスクな表現に耐性がある人

 

 

感想

まずこの物語は、夢の世界と現実の世界が複雑に絡まるファンタジー×ミステリーな物語。
ハンプティダンプティが墜落死した夢を見たある日、亜理が通う大学で(玉子)というあだ名の研究員が屋上から転落して死亡していた。というように夢と現実が互いを映しあうように様々な事件が起きる。その中でアリスは容疑者となってしまう。

もしも片方の世界で死んでしまったらもう片方の世界でも死んでしまうのではないだろうかという不安がアリスを襲う。

なぜなら女王はすぐにこう言うからだ「首をはねよ」と。


この作品は読み進めるにつれて、どんどん物語の中に吸い込まれて抜け出すことができなくなってしまう。とても上質な沼、そんなとても魅力的な沼。気が付いたらどっぷり肩どころか全身が漬かってしまっていることでしょう。


物語は夢の世界と現実の世界のことが交互に語られるように進められていく。

物語の途中までは、夢の世界で起きたことが現実の世界ではどう起きているのか。

逆に現実の世界で起こったことは夢の世界ではどう起こったのか。

だれがだれで、なにを信じていいのかわからないというようなことが続き、様々な事柄が複雑に絡み、物語に引き込まれて引きずりまわされてしまう。


しかし物語の中盤から最後にかけて、

これまで起きていたことがこうだった!、アレはそういうことを示していたのか!というような真相が続々と暴かれていきます。
その怒涛の展開に読む手は止まらず、一度少しでも真相がわかり始めてからはノンストップでラストまで読み進めて、駆け抜けてしまう。


 
作中には何か所かグロテスクな描写があるので苦手な人は注意が必要かもしれません。

 

不思議の国のアリスがモチーフになっている世界

『アリス殺し』に出てくる世界は、
「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」がモチーフになっている…らしい。
…らしいと濁すのは私がアリスの物語を読んだことがないから。
幼いころにテレビなどで不思議の国のアリスの話や、モチーフにした作品の紹介時にそれとなく物語について軽く説明されて少し知っている程度なので、不思議の国のアリスといえば≪時計もったウサギ・トランプの兵隊・女王様≫くらいしか知らない。作品にでてくるハンプティダンプティとか、チェシャ猫とかそのあたりの登場人物たちの姿かたち、性格といったことすら知らない。
ただ元のアリスを知らないからといって作品がわからない、楽しくないのかといえば
私の感想で申し訳ないがそんなことは全くない。


不思議の国のアリスの世界で起こった事件の容疑をかけられたアリスは真相を暴こうと証言集めや、推理をしようとするが、不思議の国がモチーフになっている世界での会話では、言った言わないなどで常に堂々巡りが起きているような会話でなかなかに会話が思うように進まずもどかしさを感じ、思うように証言集めや推理ができない。かといってもう片方の世界では誰が不思議の国にいる人なのかわからない。どうしたら自分の容疑を晴らせるのかと途方に暮れながら少しずつ前進していく。


堂々巡りしている会話にギョッとすることはあるがでてくるキャラの個性がしっかりしているのでキャラがもつ独特の雰囲気などはすぐに把握できるのではないだろうか。最初に頭の中にキャラの情報(個性/雰囲気)を入れることができればスムーズに読み進めることができると思う。
ただ「不思議の国のアリス」を読んだことがあるとか、キャラクターほぼほぼ知ってますって人だと元のアリスを知らない人よりは[ここでいうアレはあのことだろうなあ]とか[わかる]っていうことがもっとあるのだろうなあと感じた。

 

 

 

読み終わったあとに他の人の感想を見たら

不思議の国のアリスの世界での会話が苦痛だった
グロテスクな描写が強く書かれているので読み終わり後もきつかった
といった感想がありました。

 

他の人の感想(ブクログ)

リンク先にはネタバレを含む感想もあるのでご注意ください。

 

単行本

booklog.jp

 

文庫本

booklog.jp

 

 

最後に

アリス殺しは、ダークなファンタジーとミステリーが楽しめ、

夢と現実の世界が複雑に絡まりあう物語が面白い作品。

 

感想としてはいつも以上にうすぼんやりとしたような、濁してる言い回しが多くなってしまったが、もう本当にこの作品、読んでもらえたら わかるー!!!って手をつないでクルクル回ってハイタッチしてしまう作品です。

 

興味のある人、グロテスクな表現が大丈夫な方はぜひ読んでみてほしいです。

 

(単行本)

 

(文庫本)

 

 

 

シリーズもので
クララ殺し・ドロシイ殺し・ティンカーベル殺し
        があるらしいので読んでみたいと思います。