今回は『暗黒女子』を読んでみました。
この作品はとあるお嬢様学校(女子高)の文学サークルのメンバーが会長の死についてそれぞれが小説を描いて朗読する形のミステリー。
この物語は、6つの短編小説(作者はサークルメンバー各人)が収録された一つの物語。
作品紹介
タイトル:暗黒女子
著者名 :秋吉理香子
出版社 :双葉社
発売日 :
単行本2013年6月
文庫本2016年6月
ページ数:
単行本264ページ
文庫本296ページ
(文庫本)
あらすじ
ある女子高で、最も美しくカリスマ性をもつ女生徒が死んだ。一週間後に集められたのは、女生徒と親しかったはずの文学サークルの仲間たち。ところが、彼女たちによる事件の証言は、思いがけない方向へ――。果たして女生徒の死の真相とは? 全ての予想を裏切る黒い結末まで、一気読み必至の衝撃作!
事実はひとつ・見え方は複数。嘘と真実に驚愕するミステリー
読んだ理由
タイトルと表紙に惹かれた。
タイトルから見える重い感じ。
作品を紹介されている方がいうイヤな気持ちになれる。という感想に惹かれたから。
個人的なおすすめ度紹介
ストーリーの雰囲気・読みやすさ・過激表現(グロテスク描写など)・おすすめ度・読後感
こんな人におすすめ
ダークだけど読みやすい本がいい人。
イヤな気分だけどゾクゾクするトリハダがたつような読後感を味わいたい人。
感想
お嬢様学校。聖母女子高等学院の文学サークルを舞台にした物語。
学院でも一目置かれている「白石いつみ」。そんな彼女が亡くなった。
彼女の死は、事故なのか、自殺なのか、他殺なのか、もしかしてサークルメンバーの誰かがころしたのではないか。という噂話が流れてしまう。
そんな中、文学サークルの定例会 闇鍋をしながら各々が書いた小説を朗読するという会。第61回聖母女子高等学院文学サークル定例会は、「いつみの死」が題材となった小説が課題であった。ここでは元副会長で現会長である澄川小百合が議長的な形をとって話は進む。
そこで各々が「いつみ」についての小説を発表し、噂についての真相を暴こうとする物語。闇鍋会によって「いつみ」の死の真相は解けるのか。
はたしてサークルメンバーが語る「いつみ」はどんな人なのか。
それぞれの視点から語られる事実は何なのか。主観と客観が綺麗に織り交ざり複雑に絡まりあう物語に読む手が止まらず一気読みしてしまう作品。
作品の冒頭で「いつみ」の死にサークルメンバーが関わっているのではないかという噂話からサークルメンバーは容疑者という側面を持つ。
その側面をもつメンバーの主観で書かれた小説を朗読して見えてくるものは何なのか。
女子校生・女子高 といった限定された年齢・舞台ゆえの少女たちの仮面や本音に翻弄されてしまう物語。
闇鍋という設定から登場人物たちの顔を伺うことはできない。常に暗い室内でそれぞれ小説からしかメンバーを感じることができないのが、また面白い。
小説の語り手が変わることで見えるものが違う
この作品は文学サークル会長「いつみ」の死がテーマの小説をサークルメンバー各々が書いて朗読するという物語。それ故あるメンバーが語った一面が、別のメンバーによって覆されてしまうということが起こる。
サークルメンバーそれぞれがどのように感じ、「いつみ」をどう思っていたのか。
小説の書き方もそれぞれ個性がでていて面白い。
文学サークルには「いつみ」が声掛けした人物しか参加することができない。
メンバーは「いつみ」・初等部から親友の「澄川小百合」・3年生の同級生「古賀園子」・2年生で現役作家「高岡志夜」・2年生料理上手「小南あかり」・ブルガリアからの留学生「ディアナ・デチェヴァ」・1年生で奨学生「二谷美礼」 の7人。 顧問は北条先生。
物語はそれぞれの主観の小説が幾重にも折り重なり、真相に対する視点が複数でてくるのでどれがウソでどれが本当なのかわからなくなる。
語られる中で重いドロドロとした感情や、互いが互いに引きずりあう姿。
完璧に見える「いつみ」の姿。すべてが複雑に絡まりあって物語はラストを迎える。
途中までは、あぁ…「いつみ」はそういうことなのか。と理解しかけるが、
物語はそう簡単には終わらない。
感情を情緒をぐっちゃぐっちゃに煮込んで、ドッロドロに煮詰めた作品だと感じた。
登場人物たち全員が全員。すごく個性的で強いと感じる。その中でも澄川小百合という人物は薄く感じるが誰の小説にも登場して味を出す。「いつみ」にとって小百合は何だったのか。小百合にとって「いつみ」とは何だったのか。
とても耽美で若々しく女の子らしい少女たちの物語を堪能できる作品だと感じた。
読み終わったあとに他の人の感想を見たら
女子同士のドロドロの世界の表現
不穏な雰囲気、上品さや残酷さの女子の友情
同じモノでも視点が変わることで印象が変わる
他の人の感想(ブクログ)
リンク先にはネタバレを含む感想もあるのでご注意ください。
単行本
文庫本
最後に
暗黒女子は女子高生たちの主観と客観が複雑に絡まり「いつみ」という一人の人物を語る物語。その上で明かされる真相と闇鍋の意味。
ドロドロとした感情が読み終わったあとも残るがイヤな読後感が好きな人にはぜひ読んで欲しいと感じた。
語り手は変わるが、その朗読される小説ごとに語り手は決まっているのでわかりやすいので読みやすい。
主観的に見ていたものが、客観的に見ると違う見え方をする。
女子高生・女子学院という限定的な年齢と空間で起こる、他者への憧れ、自尊心、そして優越感…そのすべてをドロドロに煮詰めて煮詰めて、耽美な物語となる。
それを味わえる作品。
時間があればぜひ読んでみてください。
(文庫本)