薬丸岳『天使のナイフ』罪に対する真の更生とはなにか//読書記録

こんにちは。

今回は第51回江戸川乱歩賞を受賞した作者・薬丸岳のデビュー作である『天使のナイフ』を読んでみました。


少年犯罪に対する物語。

被害者家族である桧山が、過去の事件の加害者である少年の一人が巻き込まれた事件で桧山は疑われてしまう。

 

被害者の思いは少年法によって加害者を知ることすらできない。
少年たちが犯した罪に対する真の更生とはなにか。真実はなんなのかを紐解いていく物語。

 

 

作品紹介

タイトル:天使のナイフ
著者名 :薬丸岳 
出版社 :講談社

発売日 :

     単行本2005年8月

     文庫本2008年8月/(新装版)2021年8月
ページ数:
     単行本350ページ
     文庫本438ページ/(新装版)442pページ

 

 

(文庫本/新装版)

 

 

 

 

あらすじ

犯人は、13歳の少年だった。

娘の目の前で、桧山貴志の妻は殺された。犯人が13歳の少年3人だったため、罪に問われることはなかった。4年後、犯人の1人が殺され、桧山が疑われる。「殺してやりたかった。でも俺は殺していない」。法とは、正義とは。デビュー作にして、少年犯罪小説・唯一無二の金字塔。

 

引用サイト:

『天使のナイフ 新装版』(薬丸 岳):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部

 

罪を犯した少年たちには更生が必要であるという法

読んだ理由

読書を再開した際色々なミステリーの賞の受賞作を探してみたことがあった。
その時に江戸川乱歩賞を見つけその中でとてもきになったのが切っ掛け
あらすじでもうすでに興味を、意識を持っていかれていたと思う。

 

 

個人的なおすすめ度紹介

ストーリーの雰囲気・読みやすさ・過激表現(グロテスク描写など)・おすすめ度・読後感



 

個人的こんな人におすすめ

少年犯罪に関するミステリーを読みたい人
本格ミステリーが好きな人
じりじりするようなひりひりするような話を読みたい人

 

 

感想

主人公の桧山の気持ちや考えが痛いほど伝わり、個性も相まってとても読みやすい作品だと感じた。

 

被害者は加害者が少年たちであるために少年法という法で守られ、加害者の少年たちは更生という未来があるからという考えのもと保護され、被害者は加害者についてなにも知ることはできなかった。

 

その後に起きた自身の勤め先の近くで起きた事件の被害者が過去の加害者の一人だった。

過去に法が裁けないなら自身の手で罰したいと被害者の桧山はマスコミたちの前で言ったことがあったため、疑われてしまった。

 

事件をきっかけに桧山は加害者を知りたいと思った。

本当に更生しているのだろうか、と。そして物語は動き出していく。


少年法という法によって加害者の姿・情報が隠されているため加害者を知るところから始まるミステリー。少年犯罪の被害者である主人公の思い・考えが痛いほどに伝わってくる作品だと感じた。


また少年犯罪・少年法自体についての問いかけをしている作品なのではないかと感じた。

 

昨今の報道でも被害者の顔や情報は続々と報じられる中、加害者が未成年(少年)である場合被害者と面識のある〇〇歳の少年/少女。ということだけが報じられ、名前もなにも報じられることはない。


殊更に情報を報じろとは言わない。

しかし被害にあった方たちには、相手を【知る】ことはあってもいいのでないかと、この作品を読んで感じた。


それでも情報を被害者が知るということで、起こりうる未来の新たな事柄についても考えなければならないという意見もわかる。


この作品は少年法のあり方、少年犯罪の立ち位置を改めて考えさせられる作品だと感じた。

 

少年は可塑性を持つが故に更生という法

この作品を読むと可塑性という単語がでてくる。

可塑性とは思ったように形を変えられることらしい。


この作品を読んでいると、保護し手助けをしてあげることで少年たちは立ち直っていくだろうという考えのもと少年法は制定されている。
罪を犯した子どもが立ち直っていくことはたしかに必要なことだろう、しかしその理念は犯罪にあった被害者のことや、被害者の慟哭などを無視し踏みつけた上で成り立っているという。


罪を犯した子どもたちは少年法に基づく人権意識により手厚く守られる、被害にあった人には人権はないのだろうか。
子どもの心は可塑性によって立ち直るかもしれないが、被害にあった人の命も、被害者家族の心も可塑性によって復元されることは一生ないのだという対比に心が締め付けられる思いを感じた。


この少年法を主人公の桧山が非情に語るように見えるが、真相を知っていく上で自身の考えが新たにまとまっていき少年法自体について問いかける作品だと感じた。

 

真相を追い知ることで見えてくる真実

加害者少年の一人の事件をきっかけに桧山は真相を追い求める。

その中で見えていなかった真実、知らなかった真実に桧山は驚愕する。

愛する妻が殺められてしまった事件は、様々な真実、思惑が複雑に絡み合っていた。

 

真相を追い求めることで過去の事件、人物、さらには愛する妻に関する真実が判明する。

判明した真実に纏わる怒涛の展開に読む手は止まらず読み切ってしまうことでしょう。

 

 

 

読み終わったあとに他の人の感想を見たら

総合的に最高
天使のナイフって言うタイトルの意味
重いテーマであるため考えさせられた   

 

といった感想が見られた。

 

他の人の感想(ブクログ)

リンク先にはネタバレを含む感想もあるのでご注意ください。

 

単行本

booklog.jp

 

 

文庫本

booklog.jp

 

 

 

最後に

少年犯罪・少年法に関する被害者の思い、考え、視点からみる物語に読む手は止まらず、また少年法という法に対して考えさせられる作品だと感じた。

 

重いテーマが故に今もこれだという考えはしっかりとは未だにまとめ切れていない。


犯罪の低年齢化、SNSの発展・普及が最近聞くことが多いので
いつかは【少年法】をテーマにしたものを読もうとは思っていたので、
今このとき読めてよかったと感じた。

 

今の報道のあり方、少年法に関することに興味がある人


時間があればぜひ読んでみてほしい。


それでは。

 

(文庫本/新装版)