西尾維新『掟上今日子の備忘録』最速にして忘却探偵//読書記録

今回は『掟上今日子の備忘録』を読んでみました。読了日:2024/11/14

この作品はなにかと事件などに巻き込まれて容疑者や犯人だと疑われる隠舘厄介が、
一日で(寝ると)記憶がリセットされてしまう最速にして忘却探偵の掟上今日子に依頼をして謎を解決する物語です。

 

 

作品紹介

タイトル:『掟上今日子の備忘録』
著者名 :西尾維新  
出版社 :講談社

発売日 :

     単行本2014/10

     文庫本2018/7
ページ数:
     単行本338ページ
     文庫本384ページ

 

 

(単行本)

 

 

(文庫本)

 

 

あらすじ

眠ると記憶を失う名探偵・掟上今日子。彼女のもとに最先端の映像研究所で起きた機密データ盗難事件の依頼がもたらされる。容疑者は4人の研究者と事務員・隠館厄介。身体検査でも見つからず、現場は密室。犯人とデータはどこに消えたのか。ミステリー史上もっとも前向きな忘却探偵、「初めまして」の第1巻。

 

引用サイト:

『掟上今日子の備忘録』(西尾 維新):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部

 

明確な弱点を持ちつつも頼りになる忘却探偵

読んだ理由

記録がリセットされる探偵ってなんだろうという疑問と興味
作者の他作品原作アニメを見たことがあってこの作品自体を知らなかったから

 

個人的なおすすめ度紹介

ストーリーの雰囲気・読みやすさ・過激表現(グロテスク描写など)・おすすめ度

こんな人におすすめ

記憶がリセットされるという所謂弱点を持ちながらどう事件を解決するのか興味がある人
「はじめまして。」から始まる会話にもどかしさと寂しさを覚えながらも相手を思う気持ちが読みたい人。
一話完結の形の短編集でありながら大きな謎が隠れ見えるのが好きな人

 

 

感想

なにかと事件に巻き込まれてしまう厄介が、最速でその日のうちに自らにかけられた容疑を明かすために、一日で記憶がリセットされてしまう体質の掟上今日子に解決を依頼する物語。

 

何度も依頼をして何度も顔を合わせているにも関わらず今日子は必ず「はじめまして。」と厄介にあいさつをする。
厄介は「はじめまして。」のあいさつに寂しさを覚えながらも今日子のことを少なからず好意を向ける。
その感情に心が打たれる。

 

 

物語としては一つ一つが独立している短編集の形になっている。

入っている章は全部で5篇
・初めまして、今日子さん
・紹介します、今日子さん
・お暇ですか、今日子さん
・失礼します、今日子さん
・さようなら、今日子さん


独立した話でありながらも、今日子という人物について少しずつ明らかになる物語に引き込まれる。

面倒ごとに巻き込まれる厄介が務める職場で起きたSDカード紛失事件。
いの一番に容疑をかけられる厄介は、機密データを扱う職場、最速で解決しなければならないといった状況から、昔お世話になった探偵の中から、一日で記憶がリセットされてしまう探偵・掟上今日子に事件の解決を依頼することになる。

この事件の調査で、今日子の体質や弱点、探偵としての矜持を見ることができる。
最初の話で今日子という人物の特徴と明確な弱点が判明するのはとても面白いと感じた。

 

あいさつはいつも「はじめまして。」の今日子さん

2つ目の話では、以前勤めていた会社でお世話になった紺藤という人物からの相談ごとに、
今日子を紹介し調査をする話。
前回の事件で顔を合わせたにも関わらず今日子は厄介に「はじめまして。」とあいさつをする。
「はじめまして。」この言葉が心にくるものがある。
自分は相手を知っていて少なからず好意を持っているのに相手は自分を全く知らない(覚えていない)せつない。

調査終了後、紺藤が言った「海外で今日子さんを見た」という言葉がすごく気になった。


3つ目の話。あいさつは「はじめまして。」
この章では、厄介の今日子を想う気持ちと、今日子の洞察力と推理力、周りへの気遣いを感じることができる。
人間は気を付けているように見えても、知っていることを隠しながら会話するときに、言葉が意図せず変わってしまうことがあるというのを痛感させられた。

4つ目の話では、前章で登場した須永昼兵衛の死因に事件性があるのではないかとして、
遺稿となった作品も含めて捜査・調査をすることとなる。
好意を持っている相手といられるという安易な気持ちで、須永昼兵衛のこれまでの作品100冊(前章で見つけた遺稿を含む)を全部読むという今日子を、寝ないようにする頼まれごとを受ける。
好意を持っている人の知らない面が見れる、でも知りたくもなかった一面も見えてしまう。お互い寝ていないので、言葉の節々が強くなったりイライラした気持ちが前面に出てきてしまう中、限界が訪れる。
そこで厄介は、今日子のことを想いある行動をとる。

相手を想う厄介の行動と想いに強く惹かれた。


最後の章では、今日子に非がないことと、口裏合わせのために紺藤を尋ねる厄介。
そこで紺藤と話をしていると、来るはずがない今日子が突然現れる。
今日子は厄介がとった行動が、須永昼兵衛の死因の真実をとくきっかけになったといい自らの推理を披露する。
そこには作家・須永昼兵衛のこだわりや強い想いが込められていた。

今日子にとって記憶とは何か。
厄介が今日子の事務所兼自宅で見てしまったもの。
今日子が探偵を稼業としている意味。理由。
大きな謎を残して物語は終わる。

引き込まれるも引き込まれた。続きがとても気になる作品。
備忘録というタイトルも最高にいい。
読みやすくもあり引き込まれる物語は本当におすすめ。

 

 

 

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単行本

booklog.jp

 

文庫本

booklog.jp

 

 

最後に

一日で記憶がリセットされる(寝るとリセットされる)探偵
いったいどうやって事件を解決に導くのか。


明確な弱点(あらゆる手で眠らされる・長期にわたる事件に関われない)があるにも関わらず、持ち前の洞察力と推理力で見事に事件を解決していく姿に探偵・掟上今日子の強さを感じた。


また、あいさつは「はじめまして。」からの会話に、今日子を想う故にもどかしさを感じながらそれでも今日子を想う気持ち、行動をとる面倒なことに巻き込まれる体質の厄介にも一つのやさしさと強さを感じた作品。

 

 

ぜひ、時間があれば読んでみてほしい。

 

 

(文庫本)

 

 

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